川瀬巴水の若衆絵

染谷記

(川瀬巴水作・若衆画。加藤潤二版「巴水人形画集」より。本絵は茨城県某所N氏所蔵)

川瀬巴水の版画や日記・制作日誌等を網羅した『川瀬巴水木版画集』(一九七九年、毎日新聞社、渡辺規編)の解説にて、楢崎宗重氏は以下のように述べて、巴水の「私の人形絵」という文を引用しています。

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「巴水人形画集」と際する二十四図一揃いの巴水版画集を、昭和十年五月五日、子供に因む端午節句日附で、加藤潤二版元から出版した。子供のスケッチは度々やっていたので、人形をかいても、中には面白いものがみられる。この画集には巴水は一文を草して次のようにのべている。

  私の人形絵 馬込の草屋にて 川瀬巴水

  今度加藤君のお望みで聊か私の研究した人形を版画として出版致す事となりま
  した。
  現物は何れも古色蒼然たるものばかりでありましたが、画として事更に古い感
  じを出さず、亦加藤君の希望もありましたので、こふしたものに描き上げまし
  た。
  幸ひ恩師岡田先生の序文を戴きました事を有難く思っております、只美しく綺
  麗い描き上げました可愛らしい人形として、何か見る人々の心
  にふるゝ処あらば、私は其れで満足であります。
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 この「岡田先生」とは岡田三郎助(さぶろうすけ)のことで、巴水が一時師事した洋画・版画の大家です。
 二十四図、どれも独特の雰囲気を持っています。巴水の人物画はどことなく、ぎごちなさがあり、決して上々の出来栄えとは言いにくいのですが、そのぎごちなさに、不思議なアンバランスの妙味・人間味・暖かさが漂っています。
 この、若衆の顎(あご)や顔の輪郭、全体のバランスに、そうした人間味を感じることができるでしょう。

染谷智幸(若衆文化研究会)

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