ジンジン(甚之介)は江戸時代の超人気スターだったわけさ

染谷記

(甚之介の物語が書かれた実録風写本(染谷架蔵)。「寛文拾壱年有馬松千代殿御下中/益田甚之介衆道沙汰之巻」とある)

8月27日(土)に西鶴研究会(第五十回)がありまして、我らが若衆研のお仲間、森上亜希子さんが研究発表をされました。

題目は、「『男色大鑑』巻一之四「玉章は鱸に通はす」と諸写本について」というものでしたが、要するに、若衆研のアイドル、ジンジンこと甚之介の話を、様々な資料を使って比較検討し、江戸時代の初期、ジンジン譚がどのように展開していったかを探るものでした。

ジンジンの話は『男色大鑑』をはじめ、他に内容が少し違う3つの話が見つかっていて、全部で4つの話が存在することは分かっていたのですが、今回、森上さんは他に3本の作品を集めて、合計7本の比較をされたわけです。

この、同系統の版本・写本の検討は、国文学研究の王道と言ってよいでしょうね。いわゆるテクストクリティークというもので、国文学者ならだれでも一度はやってみたいものです。で、森上さんのご研究からどのようなジンジン話の相関図が出てくるか、これからのお楽しみにしたいと思います。

それにしても、一つの話に7つもの作品が遺っているというのは、すごいですね。西鶴の他の作品や短編でそんなの無かったんじゃないでしょうか。ジンジンの話は、当時それほどウケた話だったわけですね。ジンジンは若衆中の若衆、若衆の神様ですね。

ま、それはさておき、若衆研的興味で言えば、この7つのジンジン物語の中で、どのジンジンが一番、心にグッと来るか、ですね。これも、そのうち、森上さんが全文を翻刻してくださると思いますので、それをみんなで読んで批評し合いましょう。

ただ、私の読んだ限りでは、やはり西鶴の『男色大鑑』のジンジンが一番ジンジンっぽい、てな印象ですね。私流に言えば、西鶴のジンジンが一番ジコチューでツンデレ、厨二病をこじらせたヤツだからです。それが一番よく表れているのが、あの長ったらしい手紙です。他の話のジンジンも、みなこの長い手紙を書いてますが、西鶴のジンジンは、その前半でゴンクこと権九郎からの手紙を受け取りながら、一切読みませんでした。自分はあんな手紙を書いておいて、相手からの手紙は読みません。なんと失礼な奴なんでしょう(笑)。でもゴンクはそういうところに惚れたんだろうと思います。

ちなみに、『男色大鑑』の若衆は全体的に他人からの手紙は読まないですね。これって現代のアイドルも同じなんでしょうか。ファンからの手紙類は読まないけど、自分の本は押し売りする(笑)

とにかく、私は西鶴のジンジンをイチオシしますが、でも、他のお話の中のジンジンも、ゴンクもまた面白いと思います。森上さんに、それぞれの作品の全貌・全文を早く明らかにしていただきましょう。森上さん、よろしく。

以上です。

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